大学院理工学研究科(工)
理工学専攻(機械工学)
豊田 洋通
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共同研究・競争的資金等の研究課題
(公開件数:42件)
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共同研究・競争的資金等の研究課題
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研究種目
研究期間
資金種別
研究概要
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提供機関
制度名
タイトル
研究種目
研究期間
資金種別
研究概要
1
愛媛大学
イオンビーム・プラズマ援用超微粒子加速衝撃法によるダイヤモンド状膜の形成
基盤研究(C)
2
愛媛大学
異種超微粒子の静電高速衝撃によるナノスケール混合組織薄膜の創製
基盤研究(B)
3
愛媛大学
ソノプラズマによる単結晶ダイヤモンドの形成
萌芽研究
4
愛媛大学
液中プラズマによる半導体結晶の高速合成
基盤研究(C)
5
愛媛大学
水中プラズマの基礎物性と応用技術
萌芽研究
6
愛媛大学
液中プラズマ発生機構とその内部メカニズムに関する研究
基盤研究(C)
7
愛媛大学
液中プラズマの放電特性に関する研究
基盤研究(B)
8
愛媛大学
固体表面と液中プラズマ泡の相互作用に関する研究
基盤研究(B)
9
岡山大学
プラズマを利用したメタンハイドレートからの水素生成
挑戦的萌芽研究
10
液中プラズマジェット加工法の開発とダイヤモンド半導体結晶の合成
基盤研究(C)
競争的資金
11
ソノプラズマによる単結晶ダイヤモンドの形成
萌芽研究
競争的資金
12
液中プラズマによる半導体結晶の高速合成
基盤研究(C)
競争的資金
13
固体表面と液中プラズマ泡の相互作用に関する研究
基盤研究(B)
競争的資金
14
液中プラズマCVD法によるダイヤモンド形成に関する研究
基盤研究(B)
競争的資金
15
日本学術振興会
科学研究費助成事業 基盤研究(C)
液中プラズマジェット加工法の開発とダイヤモンド半導体結晶の合成
基盤研究(C)
2020/04-2023/03
前年度製作した磁場を用いた回転アークプラズマ発生電極を用いて,ダイヤモンド合成を試みた。プラズマの安定度は飛躍的に向上したが,プラズマの温度が高く(10000℃程度)基板の温度勾配が激しくなるため,Si基板においては,熱応力で破壊されるという現象が多発した。高い温度勾配でも耐える基板として,ステンレス鋼基板を選定し,ダイヤモンド合成実験を行った。アークプラズマは,磁場により安定しているが,温度勾配が激しいため,基板温度コントロールが非常に難しいことがわかった。また,成膜前のArガスに対し,原料ガスの放電電圧が非常に高く,微量コントロールしてArキャリアガスに混ぜないとアークプラズマが不安定になってしまう欠点が発見された。ステンレス鋼基板では,基板温度の安定化が成功し,実験が行えることがわかった。結晶性の炭素物質が安定に合成できることはわかったが,ダイヤモンド結晶はまだ合成不可能であった。比較実験として,マイクロ波液中プラズマによるダイヤモンド合成実験も行った。副次的な成果として,マイクロ波液中プラズマによって,ステンレス鋼上にダイヤモンドを直接合成できることがわかり,特許申請を行った。
16
愛媛大学
液中プラズマジェット加工法の開発とダイヤモンド半導体結晶の合成
基盤研究(C)
2020/04/01-2023/03/01
17
日本学術振興会
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
液中プラズマCVD法によるダイヤモンド形成に関する研究
基盤研究(B)
2011/04-2015/03
本研究では新たな高速成膜法として,液中プラズマCVD法によるダイヤモンド薄膜形成の研究を行った.この形成法は気体よりも分子密度の高い液体中で成膜を行うため,高速成膜と基板の冷却効果が期待できる.本研究ではCuなどの金属基板へのダイヤモンド薄膜の形成を目的とし,実験条件を変化させ実験を行った.また,ダイヤモンドの結晶に配向性や単結晶膜を得ることを目的とし,ダイヤモンド基板の結晶方位を変化させてダイヤモンド形成実験を実施し,形成される結晶への影響を調べた.さらに大面積(100)ダイヤモンド基板へ成膜を行い表面を観察した.
18
愛媛大学
液中プラズマCVD法によるダイヤモンド形成に関する研究
基盤研究(B)
2011/04/01-2015/03/01
19
産学が連携した研究開発成果の展開 研究成果展開事業 研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP) 探索タイプ
液中プラズマによる高品質カ-ボンナノチュ-ブの高速合成
2011-2011
本研究の最終目標は、液中プラズマCVD法を用いてシングルウォールカーボンナノチューブSWCNTを高速に大量合成するプロセスを開発することが目的である。本年度は、まず、液中熱CVD法を用いたSWCNT合成法を参考にして、熱化学反応を、液中プラズマ反応に置き換えることを試験した。液中熱CVD法では、通常、基板を500°Cに加熱するが、本研究では、合成物の顕微鏡観察とラマン分光分析によるラジアルブリージングモード(RBM)測定をそれぞれ行った。
20
日本学術振興会
科学研究費助成事業 挑戦的萌芽研究
プラズマを利用したメタンハイドレートからの水素生成
挑戦的萌芽研究
2009-2010
本研究の目的は,油や廃油などの有機溶媒,あるいは,低温高圧下で安定に存在するクラスレートハイドレートをマイクロ波プラズマによって分解し,水素ガスを燃料ガスとして回収することである.さらに,炭素成分を固形化して回収することによるゼロエミッション水素生成技術の確立を目指している.本研究では,その基礎研究として,2.45GHzのマイクロを使って,ハイドレートの分解実験を実施し,水素ガスの回収能力を調べた.マイクロ波の照射装置として,市販の電子レンジを使用した.シクロペンタンと純水から成るハイドレートが電子レンジに置かれ,その上部からアンテナ型電極を差し込むことで,大気圧プラズマプラズマを発生させた.その結果,ハイドレートがプラズマ分解され,純度65%の水素ガスが発生することが明らかになった.また,マイクロ波電力のうち,ハイドレートの分解に使われるエネルギーは投入エネルギーの約7%であることが明らかになった.次に,海底深くに存在するメタンハイドレートを分解・回収する目的で,長い同軸ケーブルを用いて,その同軸ケーブル先端でプラズマを発生させる実験を実施した.同軸ケーブルは内部導体,絶縁体であるポリエチレン,その外側に外導体である網組み線と保護被覆であるビニールによって構成されているので,液体中でプラズマを発生させる電極構成を満足している.40k Paから大気圧の環境下で同軸ケーブル先端から27.12MHzのプラズマが発生できることを確認した.発光強度の分析から,電子温度が大気圧下で,約3500Kであることが明らかになった.
21
産学が連携した研究開発成果の展開 研究成果展開事業 地域事業 地域イノベーション創出総合支援事業 シーズ発掘試験
液中プラズマによる化合物半導体結晶の形成法の開発
2009-2009
本研究では、液中プラズマ化学蒸着法を用いて、従来では大がかりな真空プロセス装置を用いて行われてきた化合物半導体結晶の形成を、安全で簡単な装置によって、形成することを目標とする。液中プラズマ化学蒸着法を用いた時の化学結合における結合電子の授受を決定し、優先する化学反応から順に一連のプロセス反応を決定し、設計を行う。その液中プラズマプロセスを用いて高純度化合物半導体の形成実験を行い検証する。
22
日本学術振興会
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
液中プラズマの放電特性に関する研究
基盤研究(B)
2008-2011
大気圧以上の圧力環境下で高周波液中プラズマを発生させ,その気泡挙動と放電特性を調べた液中プラズマの電離度は0. 4MPaのとき約0. 1%であるが,気泡内の電子は,高周波による荷電粒子の激しい運動によって気泡内に数千Kの化学反応場を提供する。液中プラズマはプラズマ自身を熱源とした沸騰現象であるので高過熱度の沸騰現象を液体中に維持することができる。液中プラズマ内に金属棒を導入すると金属ナノ粒子を合成することができる。
23
日本学術振興会
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
固体表面と液中プラズマ泡の相互作用に関する研究
基盤研究(B)
2008-2010
液中プラズマ化学蒸着法における膜形成の原理を,基板と液中プラズマ泡の相互作用をハイスピードカメラで観察することによって解明し,均質な膜形成のための条件を提示した.ダイヤモンドや,炭化珪素,窒化アルミニウムなどの化合物半導体を液中プラズマを用いて成膜するための化学反応の制御原理を解明した.液中プラズマ中では大きい電気陰性度の原子と小さいイオン化エネルギーの原子が優先的に化学反応することがわかった.
24
産学が連携した研究開発成果の展開 研究成果展開事業 地域事業 地域イノベーション創出総合支援事業 シーズ発掘試験
液体中高密度プラズマ処理による高機能性表面繊維製造法の研究
2007-2007
液中プラズマは、液体中の泡の中で高密度プラズマを発生させたものである。プラズマは液体中の泡で包含されているので、基材表面にそのプラズマを接触させても、液体の効果により基材表面が熱から保護される。本研究では液体中の高密度プラズマを、繊維基材に接触させ、繊維基材表面を熱的に損傷することなく高密度プラズマから供給されるラジカルに作用させ、高機能性表面を持った繊維を製造する方法を開発する。
25
日本学術振興会
科学研究費助成事業 基盤研究(C)
液中プラズマ発生機構とその内部メカニズムに関する研究
基盤研究(C)
2006-2007
液中に2.45GHzのマイクロ波と27.12MHzの高周波をそれぞれ照射してプラズマを発生させ,液中プラズマの温度測定を実施し,その特性を調べた.水中でプラズマを発生させた結果,プラズマの電子温度は,圧力400hPaから大気圧の範囲内では,高周波プラズマでは5000〜4000K,マイクロ波では4000K〜3000Kであった.水中マイクロ波プラズマでは,水温上昇にエネルギの一部は消費される.液中プラズマは液中の気泡内に気相プラズマが発生する現象であり,気泡の膨張・収縮の運動がプラズマ内部温度に大きな液用を及ぼす.水中プラズマの放電形態は,電極間距離と電圧により変化し,気相プラズマで観察される針電極からのコロナ放電の様式に似ていることが明らかになった.水素スペクトルの半値幅からプラズマの電子密度を見積もった結果,高周波(27.12MHz)では,(6.0±2.0)×10^<14>cm^<-3>,マイクロ波(2.45GHz)では(7.2±2.0)×10^<14>cm^<-3>を得た.また,気体温度として, OH温度を見積もった結果,OHの回転温度が約3000Kであることが明らかになった.液中では,液体の気化によって気泡内部の熱が奪われた結果,電子温度とガス温度が一致しない非平衡状態が大気圧近くでも維持される.数値解析から,気泡内温度は活性化エネルギの与え方によって異なるものの,数千Kに達することが明らかになった.このプラズマを有機溶媒中で利用すれば,燃料ガスの生成や多孔質シリコンカーバイド,カーボンナナチューブなどの合成が可能である.最後に,27.12MHzを用いた超臨界二酸化炭素プラズマについての分光計測を行い,プラズマの発光種を特定し,プラズマ温度を求めた.その結果,超臨界プラズマの回転温度,振動温度を4000K〜5000Kと導出した.また超臨界プラズマ中で,三酸化タングステンナノワイヤーが生成できることを示した.
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産学が連携した研究開発成果の展開 研究成果展開事業 地域事業 地域イノベーション創出総合支援事業 シーズ発掘試験
液中プラズマによるダイヤモンドの高速形成
2006-2006
液中プラズマは,愛媛大学で発明された世界初のオリジナル技術であり,特許認定(3件)を受けている.さらに新規性としても,米国応用物理学会誌速報(APPLIED PHYSICS LETTERS,IF 値=4.2)に数度掲載され,高く評価されている.この,液中プラズマCVD 法を用いて,まずダイヤモンド結晶を合成するための使用溶液(種類,配合割合),圧力,基板温度,溶液の流れなどの合成条件の基礎を明らかにする.さらに,液中プラズマ法の最大の特徴である高速合成のための条件を考察して探索し,工業プロセス適用のための指針を得る.
27
日本学術振興会
科学研究費助成事業 基盤研究(C)
液中プラズマによる半導体結晶の高速合成
基盤研究(C)
2005-2007
1.ダイヤモンドの高速合成 マイクロ波による液中プラズマ発生装置を用いてパラメーターを詳細に振って,ダイヤモンド合成実験を行った.アルコール水溶液濃度,基板温度,電磁波パワー,電磁波周波数,基板電極間距離,を変化させてダイヤモンド結晶合成条件の最適化を行った.圧力とプラズマ消費電力の値を大きく上げることで,気相プラズマCVD法によるダイヤモンド合成速度をはるかにしのぐ合成速度を達成した.マイクロ波の効率的な導入を実現し,直径6mmの電極を用いて,800hPaのメタノール溶液中に300Wの2.45GHzマイクロ波を導入することによって,シリコンウエハー基板上の直径5mmの領域に10分間で33μm厚のダイヤモンド膜を合成することができた.合成速度は200μmであった.本成果は,特許に申請された. 2.SiC合成条件の最適化 シリコンオイルに同等量の炭化水素を混合することで,酸素が炭化水素の炭素と水素によって引き抜かれる反応が起こって,結晶性の良いSiC結晶が合成された.遊離炭素としてグラファイトの結晶もSiCと同時に析出した.化学反応で生成された酸素も形成物に取り込まれた.成膜と同時にプラズマ発光分析を行った.メタンガスが水とプラズマ中で水蒸気改質反応を起こし,強力な還元作用をもつ水素ラジカルを発生するメカニズムを明らかにした. 3.AIN合成可能性試験 液中プラズマ反応法により,水にAlCl_3とNH_4Xを溶かして水溶液中プラズマを発生させ,AIN結晶の合成の可能性を調べた.種々の可能性実験を行い,Al_20_3の形成は見られたが,AINの形成は,実現できなかった.AINの液中プラズマ合成のためには,プラズマ中でAl原子とN原子がいかに近接し結合するかが重要であることがわかった.
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日本学術振興会
科学研究費助成事業 萌芽研究
水中プラズマの基礎物性と応用技術
萌芽研究
2005-2006
「水中プラズマの基礎研究により、その物性を明らかにし、革新的な技術開発への道筋をつける」ことが本研究の目的であった。このために、まず、プラズマの基礎的なパラメータである温度・密度について分光計測により、明らかにした。温度に関してはOHラジカルからの微細スペクトル(306-312nm)を計測し、計算コード(LIFBASE)による結果とフィッティングした。この結果から、3400-3800Kであることが明らかとなった。密度に関してはHβ線のシュタルク広がりから評価が出来、3×10^20m^-3であることが明らかになった。これらのパラメータから見積もった電離度は1.5×10^-4であった。低温のプラズマでは通常のことであるが、本プラズマも弱電離プラズマである。 OHラジカル量が入射電力とともに大きくなることが分光計測から明らかとなった。メチレンブルーの分解もそれにともなって大きくなっている。 メチレンブルー水溶液をプラズマに晒した後、直後と十分な時間経過後(3週間後)では3週間後の分解量が大きい。この原因を追及するため、オゾンと過酸化水素といった活性種についても評価した。それぞれの溶存計を用い、計測したところ、200ccの純水に300W・4分30秒の高周波印加に対して、過酸化水素は0.9mg/l、オゾンは4mg/lの濃度であった。これらの結果から、オゾンや過酸化水素といった反応速度の遅い活性種によって、長い時間を経過して分解が進んだものと推定している。 他エネルギーの重畳では500kHz・3kWの高周波磁場を印加したが、特別な変化が確認できなかった。
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日本学術振興会
科学研究費助成事業 萌芽研究
ソノプラズマによる単結晶ダイヤモンドの形成
萌芽研究
2003-2004
本年度は,液中プラズマで2通りの方法を用いてダイヤモンド単結晶の形成を試み,以下の成果を得た. [1]アルコール水溶液中プラズマを用いたダイヤモンド形成実験 この実験では,炭素ラジカル供給源のアルコールを水に溶かして,液体で水素ラジカルリッチなC_2ラジカルプラズマを形成し,ダイヤモンドの形成を試みた.アルコールとしては,メタノールおよびエタノールを用い,水素供給源として純水を使用して,炭化水素と純水の混合比を変化させて,形成物の走査電子顕微鏡写真およびラマンスペクトル分析を行った.また,各実験条件下でのプラズマの発光スペクトルを測定し,形成物の炭素の結合状態と発光スペクトルの関連を調べた.当初,水は水素ラジカルのみ供給して,非晶質炭素のエッチングを行うと予想していたが,水酸基ラジカルや酸素ラジカルも多量に発生させるため,結晶のダイヤモンドの成長も阻害することがわかった.液体中でダイヤモンドを高速に成長させるためには,水素のみのラジカルを多量に供給できる方法が必須であることがわかった. [2]ダイヤモンド空間形成実験 超音波と電磁波の場の解析により音響気泡の形状と位置を制御しながら,形成されたダイヤモンドを常に空間中に滞在させ,超高温・高圧力の場をダイヤモンド表面に常に滞在するようにしながら,ダイヤモンド単結晶の形成(ホモエピタキシャル成長)を行う装置の製作を行った.空間中に超音波により捕捉させた気泡中に電磁波を照射すると液中プラズマが発生したが,ハイスピードカメラによる撮影と,気泡の運動の数値計算解析より,プラズマは,超音波の振動よりもかなり遅い周期で振動することが判明した.超音波の振動とプラズマの振動を同期させるためには,更なる高パワーの超音波を使用する必要があることがわかった.そのプラズマにより空間形成された粒子はナノチューブであることがわかった.
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日本学術振興会
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
異種超微粒子の静電高速衝撃によるナノスケール混合組織薄膜の創製
基盤研究(B)
2002-2003
高真空中または低圧力水素ガス中の平行平板状電極間(DC高電圧を印加,付加的に磁界,磁界と高周波電界を重畳)において,数十nmサイズの炭素超微粒子とSi超微粒子との混合超微粒子を静電的に高速衝撃・付着させることによる新しい薄膜形成法を開発し,ダイヤモンド状炭素(DLC)とSiの混合組織薄膜を作製した。2年間の研究を通じて,その混合膜の成長特性,電子構造的特性及びこれらの特生の水素プラズマエッチングによる改善法について究明し,以下の知見を得た。 (1)混合膜の形成とその直流伝導特性については,1)形成される混合膜のSi含有率は原料超微粒子のSi混合率に比例するが,その混合率には限度(20%程度)がある。2)混合膜の直流伝導経路はDLC相であり,電気抵抗率はSi含有率に依存して増加する。3)混合膜中のDLC構造は,Si含有率の増加に伴ってグラファイティックな構造へと変化する。 (2)成膜の効率化と高品質化については,1)混合膜の成長速度は,直流電界に磁界のみを重畳した場合(MS)及び磁界と高周波電界とを重畳した場合(RF-MS),直流電界だけの場合に比べていずれも増加するが,高周波電界を併用すると少し減少する。これらの結果は,水素プラズマの作用である表面清浄化による粒子付着効率の向上と,エッチングによる材料除去が膜成長過程に関与したことを示唆する。2)混合膜のホッピング電導特性は,プラズマエッチング作用が強くなる順(MS<RF-MS)に抵抗率とその温度係数が高くなる。これはダングリングボンドが減少して局在準位密度が低下したことを示しており,水素プラズマの膜成長過程に及ぼす水素プラズマの作用に関する知見と符合する。これらのことから,水素プラズマの効果によって膜質及び膜成長効率を向上させることができたが,電導特性におけるSi/C界面効果の発現は認められなかった。
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日本学術振興会
科学研究費助成事業 基盤研究(C)
イオンビーム・プラズマ援用超微粒子加速衝撃法によるダイヤモンド状膜の形成
基盤研究(C)
2000-2001
1.超微粒子衝撃コーティング法における磁界・高周波電界援用効果と形成膜の特性 超微粒子衝撃コーティング装置の成膜領域に変更を施し,電極形状を改良し,DC高電界の印加に加えて高周波(RF)及び磁界(マグネトロンスパッタ効果(MS))の重畳が可能な方式とした.この装置を用いて,DLC膜の成長効率,形成膜の微細構造及び境界摩擦特性について究明した結果,(1)膜成長速度は,MSのみ援用の場合で従来比の約11.3倍(新電極にDCのみ印加した場合の約2.5倍),MSとRFを両用した場合で従来比の約14.7倍(同じく約3.2倍)と著しく向上した. (2)成膜領域の電磁界条件をDC印加のみ,MS援用,MS・RF援用と変化させると,膜成長効率は次第に低下するが,膜の抵抗率とその温度係数は高くなりアモルファス構造化が進む. (3)膜質と境界摩擦特性の関連については,アモルファス相の含有率が高いDLC膜では,表面ガスの吸着量は少ないが吸着熱が高く,境界潤滑効果がより長く持続する. 2.超微粒子ビー厶加工法におけるイオンビー厶援用効果及び膜形成機構に関する検討 超微粒子衝撃エネルギの定量化に不可欠な帯電量測定実験を実施し,電子ビーム照射帯電装置(試作)の基本性能と凝集超微粒子の均一分散化供給法について究明した結果,(1)帯電装置における大電流の安定的出力を確認した. (2)超微粒子の均一分散化供給法として,(1)凝固させた超微粒子分散溶剤の真空中気化によって供給する方法は,真空度低下を生じるので問題がある. (2)静電的噴霧微細化供給法は帯電実験に適用可能である. 3.まとめ 超微粒子衝撃コーティング法における磁界・高周波援用DLC膜形成について,膜成長効率,膜微細構造及び潤滑性に関する評価を行うことができた.超微粒子ビーム加工法については,超微粒子の帯電実験法を確立した。今後,電子ビーム照射条件と帯電量の関係,静電加速による衝撃エネルギと膜成長の関連及び膜質改善へのイオンビーム援用効果を究明する.
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日本学術振興会
科学研究費助成事業 萌芽的研究
制御された炭素・水素ラジカルを用いたβ-C_3N_4薄膜の合成法の開発
萌芽的研究
1997-1998
本研究では,高圧力下で安定してプラズマを発生できる装置により,窒素ガスとメタンガスを原料ガスに用いてβ-C_3N_4を合成することを目的とした。研究計画における,マイクロ波共振回路及び高圧力マイクロ波プラズマ装置の改良については,計画にあるように高エネルギ密度状態を実現するため,最適化しやすいように等価回路として表現できるものとするとともに,プラズマの状態に応じて回路定数を変化させることができる要素を付加した。また,基板温度が重要な因子であることがこの研究において明らかとなったため,基板の温度を制御できるようにした。このように装置により研究計画におけるβ-C_3N_4の合成を試みた。特に,膜の炭素と窒素の成分比に着目し分析を行った結果,次のようなことが分かった。 ・10hPa〜大気圧の範囲では反応室内圧力が低い方が膜中の窒素の含有率が大きくなる。 ・基板温度が低い方が膜中の窒素の含有率が大きい。 ・プラズマ内の活性ラジカルが多いと膜中の窒素の含有率がが大きくなる。 ・基板材料によって成膜性が大きく影響を受ける。 得られた膜の成分比はいずれもβ-C_3N_4としてのN/C=1.33より小さい。これらのことより,基板温度の制御範囲をより低温域へ拡げるとともに,高エネルギ密度を実現する必要がある。 以上より,β-C_3N_4の合成には,より高投入マイクロ波電力を実現しながらも基板温度を低く抑えるべきであるという指針を基に,窒素原子のさらなる高活性化のためマイクロ波電源の高電力化および共振装置のさらなる改良をを行うことで,β-C_3N_4の合成が期待される。
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日本学術振興会
科学研究費助成事業 奨励研究(A)
第一原理分子動力学計算による炭素・金属界面反応の解明と濡れ性制御への応用
奨励研究(A)
1996-1996
本年度は科学研究費補助金の援助を得て研究を行い、以下の成果を得た. 1.超高真空中における高純度炭素基板に対する液体金属の濡れ性実験 超高真空濡れ性実験装置を用いてAu,Ag,Cu,Al,Fe,Tiの高純度炭素およびタングステン基板に対する接触角の測定方法を確立し,従来の他者のいかなる研究においても成し得なかった再現性・信頼性の高い測定結果を得た.本測定法は研究代表者の考案したオリジナルな方法であり,最大の特徴は電子顕微鏡を用いた微視的な観察と,超高純度Arスパッタを用いた試料表面のin-situ清浄化にあるといえる. 2.第一原理分子軌道計算による実験結果の評価 NECスーパーコンピューターSX用分子動力学計算プログラムAMOSSを用いて,二原子分子モデルによるHartree-Fock分子軌道計算を行い全ての濡れ実験系の組み合わせの異種原子間相互作用の計算を行った.遷移金属の性質をよく調べるため,結合軌道の電子の全スピン状態を考慮した計算を行った(制限開殻Hartree-Fock計算),系の結合エネルギーは実験結果から得られる相互作用エネルギーと定性的に良く一致し,実験結果と計算方法の正当性が認められた.結合軌道の混成状態の詳細な分析により,濡れ性がs軌道の混成結合の強さに,相互拡散性がd軌道の混成結合の強さに関係することがわかった.量子力学を用いた濡れ性の解明の成功は国内外を含めて初めてのことである. 以上の成果は平成8年度中に2つの国際会議にて発表を行った.(計算物理関係,精密工学関係)
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日本学術振興会
科学研究費助成事業 奨励研究(A)
超微粒子ビーム加工用超高速ビームの開発
奨励研究(A)
1995-1995
1.電子衝撃帯電実験 直径5mmのグラファイト球に加速電圧0〜20kV,照射電流0〜2mAの電子ビームを当て,ファラデーケージ法で帯電量の定量的測定を行った.その結果理論帯電量Q=4πεγVの70%程度の負極性帯電が得られた.グラファイト球への電子流入量の電圧依存性測定より,真空中の残留ガス分子の二次帯電によるイオンの負帯電グラファイト球への流入現象が明らかになった.帯電量の緩和はその二次イオンによるものである.二次イオンが生成しない超高真空中では理論帯電が行えることが明らかとなったが,超微粒子ビーム加工には正極性の帯電が必須であり,この帯電方式は超微粒子ビーム加工には不向きであることが結論づけられた. 2.イオン衝撃帯電実験 1.の実験と同様の装置で雰囲気帯電型Arイオンガン(加速電圧0〜2kV,照射量50μm)を用いてArイオン照射帯電実験を行った.理論帯電量の80%程度の正極性帯電が得られた.電子ビーム帯電と同様に残留ガス分子からの二次放射電子の流入が帯電量緩和の原因と考えられる.しかし,真空度を上げれば正極性の理論帯電量が得られ,超微粒子ビーム加工法に適した方法であることが結論づけられた. 3.超微粒子ビーム加工用高帯電装置の設計 以上の基礎モデル実験より,超微粒子ビーム初(期速度1km,粒径20nm)の帯電装置の設計を行った.超微粒子のイオン照射される時間が数μsecと非常に短く,理論帯電量に帯電させるためには照射電流数十mAの大電流イオン源が必要であることがわかった.本研究では真空度と電流の共に満たせるイオン源としてECRプラズマイオン源を候補にあげ,高帯電装置の設計を行った.
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日本学術振興会
科学研究費助成事業 一般研究(B)
高圧力マイクロ波プラズマCVD法によるダイヤモンド微粒子の作製に関する研究
一般研究(B)
1994-1995
本研究では,目的とするダイヤモンド粒子を得るために,実施計画の内で,1.共振器・微粒子生成室の製作・改良及び周辺装置の開発,2.微粒子の作成および微粒子生成メカニズムの検討についておこなった。1.と2.は密接に関連しているので,総合的に記述する。30気圧の高圧までマイクロ波プラズマを発生させることのできる装置を開発した。そこでは,半同軸共振器をプラズマ生成室及び微粒子生成室として用い,共振器形状を最適化した。原料は,メタン及びヘリウムの混合ガスである。そこで得られたものは,直径50nm程度のピロカーボンという単結晶の超微粒子であり,同粒子の新しい生成法として注目される。この研究を通じ高圧力下においてもダイヤモンド粒子の生成には,水素ガスが必要であることが確認された。高圧力においてマイクロ波プラズマを発生させるには半同軸型が有利であることが確認されたが,上記の装置そのままでは,電極と水素ガスの反応が避けられないことより,プラズマと電極部が接しない構造の装置を開発した。ここで,計画にあるようにプラズマの状態を正確に把握し制御するための,装置を製作することができた。必然的に,装置を等価回路として定量的に捉えることも可能となった。これにより,プラズマの発生前後のインピーダンスの変化に対しても,最適な状態で整合できるようになった。そこで,メタン及び水素の混合ガスを投入することにより,250Torr下において,ダイヤモンド微粒子を生成することができた。まだ,自型よりの判断であり,詳しい分析は,直ちに行う。また,数分の1気圧であるが,その改良の指針を把握しており,直ちに改良を行う。今後,より高い気圧におけるダイヤモンド粒子または膜の生成を目標として,研究を続けるとともに,高圧力におけるマイクロ波プラズマの生成技術を利用し,ダイヤモンドよりもその性質が優れているというC_3N_4の生成を試みる。
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日本学術振興会
科学研究費助成事業 奨励研究(A)
第一原理量子力学電子軌道計算による濡れ性の解明と制御
奨励研究(A)
1994-1994
1.超高真空中での液体金属の濡れ性実験 ターボ分子ポンプ(現有)により排気した10^<-7>Paの超高真空中チャンバ内でフラッシュにより清浄化した高融点金属と液体金属の濡れの接触角を測定し真の相互作用を調べた(現有装置)。Arイオンクリーニング清浄化処理の結果、従来よりはるかに安定した濡れ性が実現でき、接触角の測定精度が向上した。本研究により濡れ性の測定技術が確立したといえる。 2.第一原理量子力学軌道計算による濡れのシミュレーション 本年度は、第一原理の電子軌道計算プログラムが完成したので、そのプログラムを用いて実際に金属表面の計算を行った(大阪大学 NEC-SX3 科研計算費使用)。WおよびMoの表面のスーパーセルモデルについて計算を行ったところ、SX3の性能限界内でエネルギー誤差0.3eV以下の計算が行えることがわかった。しかし、W表面に吸着させるべきAu,Ag,Cu等の原子については、現状では10eV程度のエネルギー誤差が生ずることが判明した。これらは計算に用いた原子のポテンシャル(擬ポテンシャル)の勾配の程度に依存する問題である。全ての原子系について0.1eVエネルギー精度で計算を行うには、プログラムの改良(アルゴリズムの高速化)が必須条件である。 定量的な計算にはまだ問題があるので、定性的な濡れ性計算を行ってみた。W表面のスーパーセルモデルにAu,Ag,Cu,Pb,Sn,Al等の原子を吸着させたモデルで吸着原子の位置をいろいろ変えて吸着エネルギー曲線の計算を行った。エネルギー最低の構造が全ての場合についてわかった。濡れ性実験との相関については現在検討中である。
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日本学術振興会
科学研究費助成事業 一般研究(B)
超微粒子ビームによる機能性薄膜作製法の開発
一般研究(B)
1993-1994
1 超微粒子ビーム加工装置の製作・・・マイクロ波空洞共振型超微粒子生成室(プラズマ発生室)と加工室(高真空室)とが細い金属製の輸送管で連結された加工装置を製作した。 2 超微粒子の作製実験・・・生成超微粒子の粒径制御と最適生成条件の検討を行った。粒径20nmのグラファイトライク構造の超微粒子が再現性良く作製できることがわかった。この超微粒子を輸送して次項の加速実験を行った。 3 超微粒子の加速方法の開発・・・電界電子放射帯電加速、二次電子放射帯電加速、流体加速の三方式の超微粒子の加速法に基づいて装置を製作し、加速実験を行った。電界電子放射帯電法による加速実験では、超微粒子の衝撃加速による構造変化が認められた。二次電子放射帯電法および流体加速法による加速実験では構造変化が認められなかった。製膜の効率という点ではこの二方式が優れているので、今後も研究を続ける必要がある。 4 超微粒子の速度測定法の開発・・・加速された超微粒子の速度をTOF(飛行時間)法に基づいて測定できるシステムを製作し、速度測定実験を行った。輸送管から吹きだした超微粒子の速度が測定できた。現状では測定誤差の問題があるので、測定系の改良が必要である。 5 製膜技術の総合評価・・・本研究により超微粒子の生成・輸送・加速という一連のプロセスの有機的な結合がなされ、超微粒子ビーム加工法の基礎が形成された。
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日本学術振興会
科学研究費助成事業 奨励研究(A)
原子間相互作用力の測定によるダイヤモンド状薄膜の固体超潤滑機構の解明
奨励研究(A)
1993-1993
1 ガス雰囲気制御可能固体間微少摩擦力測定装置の作製 高真空中での基板処理により清浄化されたダイヤモンド状薄膜表面に水素ガス分子、窒素分子、あるいはその他の分子を原子層オーダーで吸着させ、ある定温度のもとで低加重での膜間の摩擦力を測定することのできる装置を製作した。また、超高真空中で0.1muNの相互作用力を測定できる装置も作製した。どちらの装置も順調に動作し、雰囲気制御のもとでの摩擦力および相互作用力の測定が可能となった。 2 純ガス雰囲気中でのダイヤモンド状膜の境界潤滑特性の測定 ダイヤモンド状膜の純水素・窒素ガス雰囲気中での境界潤滑特性が明らかとなった。水素ガス分子は容易にダイヤモンド状膜の内部に吸蔵されるがガス分子を介しての膜間の摩擦力は大きく、ガス分子と膜との結合力も弱い。窒素ガス分子はダイヤモンド状膜の表面で強固に化学結合し、しかも膜間の摩擦力を低減させる(mu=0.01)。これにより、水素ガスよりも窒素ガスの希薄吸着状態がダイヤモンド状膜の極低摩擦に寄与することがわかった。 3 超高真空中での原子間相互作用力の測定 超高真空中での同種金属間の相互作用力の測定ができた。力の大きさは0.1muNオーダーであり、凝集エネルギーから予想される力と同じオーダーであった。これは原子100個分の力に相当する。また、力の大小は凝集エネルギーの大小と一致し、本測定装置により固体清浄表面間の相互作用力の測定が可能であることが実証された。今後はダイヤモンド状膜を超高真空中でのArイオンエッチング処理により清浄化を行い、各種雰囲気中での相互作用力の測定を行う。
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日本学術振興会
科学研究費助成事業 奨励研究(A)
固体表面でのぬれ性の量子力学的モデリングとそのイオン照射による制御
奨励研究(A)
1992-1992
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日本学術振興会
科学研究費助成事業 一般研究(C)
高圧型マイクロ波CVD法による微粒子の作成とその応用に関する研究
一般研究(C)
1992-1993
当初の計画に基づき成果の概要を示す。 1.インピーダンス測定 ネットワークアナライザーが使用できる目途が立ち測定した。そこで,プラズマプロセス中においてインピーダンスを測定する方法を研究し,製作可能であることが分かった。これは,進行中であり,報告書に未記入である。 2.共振器・微粒子生成室の設計 高圧力においてプラズマを発生させ安定に維持するために,2段型共振器と同軸型共振器の2種類の装置を作成した。いずれもこの研究において独自に開発したものであり,この装置を利用して微粒子の生成を行った。前者の装置は,プラズマを安定に維持することに優れ,後者は,共振度が高く,今後,高パワー密度を実現するためには欠かせないものである。いずれも,今回の最高加圧力である5気圧においてもプラズマを発生させることができ,当初の目的を達成することができた。 3.微粒子の作成 上記の装置で,微粒子の作成を試みた。原料は,生成されるものが微粒子及び薄膜を想定したことにより炭素系のものを用いた。微粒子を生成しTEMにより,観察,分析すると結晶性(ダイヤモンドに近い構造)を有することを示した。そこでこの粒子の生成条件について系統的に調査するため,結晶性に着目し,主に次のようなパラメータを変化させた。(1)キャリアガス,原材料ガス及び添加ガスの種類及び濃度比。(2)生成室内圧力,(3)マイクロ波の投入電力,(4)プラズマインピーダンスなどである。各々詳しく分析を行ったが結晶性がよいということを基準として結論するならば,(1)については,ヘリウムとメタンガスの組み合わせに,水素を微少量添加すること,(2),(3)および(4)についてはいずれも高い方がよいことがわかった。また微粒子生成時のプラズマの発光分析を行った結果,スワンバンドの発光が見られ,C_2ラジカルの存在が確かめられた。これが,再結合し,微粒子が生成されているものと思われる。
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日本学術振興会
科学研究費助成事業 奨励研究(A)
超微粒子ビームによるダイヤモンド膜の作製
奨励研究(A)
1991-1991
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日本学術振興会
科学研究費助成事業 一般研究(C)
硬質アモルファス炭素膜の極低摩擦現象およびその表面吸着条件
一般研究(C)
1988-1989
カ-ボンラっク粒弊の高速衝撃付着によって形成した硬質アモルファス炭素膜について、表面ガス吸着状態下での極低摩擦現象を理論的、実験的に究明した。まず、ガス吸着性に関係する膜構造特性について構造分析および抵抗率・熱電能の温度特性の測定から評価した。その結果、本炭素膜は、カ-ボンブラックの握ラファイト的構造とそれの衝撃物質であるアモルファス構造とから成り、多量の構造欠陥(ダングリングボンド)を含有することがわかった。また、100℃以上の加熱列理に伴って、アモルファス相は漸次グラファイト相へと構造緩和し、その過程でダングリングボンド密度はさらに増大することが明確になった。つぎに、炭素膜間で各種ガス雰囲気中での同一軌道繰り返し摩擦実験を行い、高潤滑性を維持し得る表面録着状態が究明された結果、水素、水蒸気、窒素各分子の希薄な吸着状態下で低摩擦係数が得られ、とくに水素雰囲気気では固体間摩擦としては異常に低い0.01以下となった。しかし、酸素吸着は摩擦作用下で逆に凝着促進効果を持つことがわかり、吸着ガスの種類に追じた摩擦への影響が見いだせた。また、大気中では水分子吸着の影響が大きく、それの希薄吸着状態は、摩擦条件(荷重、速度、インタ-バル)で決まる脱離速度と、膜質(グラファイト質、表面官能基の含有割合)および環境条件(温度、ガス分圧)とで決まる吸着速度との平衡によって成り立つことが明らかになった。すなわち、脱離過程が優位になると膜の凝着、摩耗が進行し、摩擦係数は上昇に転じることになる。 以上の炭素膜構造とその潤滑機構の解明より、極低摩擦現象はアモルファス構造とその表面への希薄な分子吸着の両者に関係して発生するといえる。この高い潤滑性を安定維持することは、温度100℃以下の特定ガス雰囲気中での準静的すべり摩擦といった限定された使用状況下では、後者を制御し得ることにより可能と思われる。
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